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東京地方裁判所 昭和56年(ワ)8496号 判決 1984年4月17日

原告(選定当事者)

日新火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

藤澤達郎

右訴訟代理人

岡田一三

土田耕司

北新居良雄

右訴訟復代理人

大西清

(選定者は、別紙選定者目録記載のとおり。)

被告

日本国有鉄道

右代表者総裁

仁杉巖

右訴訟代理人

森本寛美

外八名

主文

一  被告は、原告(選定当事者)に対して、原告及び各選定者に対する別表一「認容金額」欄記載の各金員及びこれらに対する昭和五六年八月一五日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

二  原告(選定当事者)のその余の請求はいずれも棄却する。

三  訴訟費用は原告(選定当事者)の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告(選定当事者)に対して、原告及び各選定者に対する別表二「請求金額」欄記載の各金員及びこれらに対する昭和五六年八月一五日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告(選定当事者)の請求はいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告(選定当事者)の負担とする。

3  担保を条件とする仮執行免脱宣言

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告(選定当事者)及び各選定者は、いずれも火災保険、海上保険、運送保険その他の各種損害保険事業を営む会社であり、被告は、日本国有鉄道法に基づいて設立された鉄道事業等の業務を行う公法人である。

2  訴外株式会社北洋相互銀行(以下「北洋相互銀行」という。)は、昭和五六年三月九日、被告との間で、銀行券金五〇〇〇万円在中の布袋(以下「本件小荷物」という。)を被告函館駅(以下「函館駅」という。)から同松前駅(以下「松前駅」という。)まで鉄道貴重品扱で運送することを被告に委託する旨の契約を締結し、これを引渡した。

3  本件小荷物は、翌一〇日、函館駅午前七時一五分発の第七二一D列車に積載して運送されることになつていたところ、函館駅一番ホームに停車中の同列車二両目の乗務員室において、何者かによつて騙し取られ、今日に至るも、右犯人は検挙されておらず、本件小荷物も発見されていない(以下「本件詐取事件」という。)。

4  本件小荷物が荷送人に引渡さるべきであつた日における到達地の価格は金五〇〇〇万円であり、北洋相互銀行は、本件詐取事件の発生によつて、少なくとも同額の損害を被つた。

5  したがつて、北洋相互銀行は、被告に対し、運送契約上の債務不履行による損害賠償として、本件小荷物の滅失につき金五〇〇〇万円の損害賠償請求権を取得した。

6  原告(選定当事者)は、昭和五五年九月一七日、北洋相互銀行との間で、幹事会社として選定者のためにもすることを示して、次の内容の運送保険(共同保険)契約を締結した。

(一) 被保険者 北洋相互銀行

(二) 保険の目的 日本国内所在の被保険者の全事業所が輸送する外国通貨を含むすべての現金

(三) 保険事故 輸送中の現金の盗取又は紛失若しくは滅失

(四) 保険期間 昭和五五年一〇月一日から昭和五六年九月三〇日まで

(五) 輸送用具 鉄道貴重品扱等

(六) 発送地及び到着地 日本国内各地相互間

(七) 運送人 北洋相互銀行及びその他の運送人

(八) 保険金額 現金額

(九) 共同保険特別約款付

(1) 本保険契約は、原告及び各選定者による共同保険であつて、原告及び各選定者は、本保険契約上、次の各保険引受割合に応じて単独別個に権利を有し、義務を負い、連帯しない。

原告 二三パーセント

選定者共栄火災海上保険相互会社 一八パーセント

同安田火災海上保険株式会社 一六パーセント

同日本火災海上保険株式会社 一三パーセント

同東京海上火災保険株式会社及び同住友海上火災保険株式会社 各七パーセント

同千代田火災海上保険株式会社 四パーセント

同日動火災海上保険株式会社、同日産火災海上保険株式会社及び同第一火災海上保険相互会社 各三パーセント

同富士火災海上保険株式会社 二パーセント

同同和火災海上保険株式会社 一パーセント

(2) 原告は、本保険契約の幹事会社として、保険料の領収、保険金の支払その他の事項に関し、選定者を代理する。

7(一)  原告(選定当事者)及び各選定者は、右6の保険契約に基づき、本体詐取事件の発生によつて北洋相互銀行が被つた損害を填補するため、各保険引受割合に応じて、同銀行に対する保険金の支払につき、次の各金額を負担した。

原告 金一一五〇万円

選定者共栄火災海上保険相互会社 金九〇〇万円

同安田火災海上保険株式会社 金八〇〇万円

同日本火災海上保険株式会社 金六五〇万円

同東京海上火災海上保険株式会社及び同住友海上火災保険株式会社 各金三五〇万円

同千代田火災海上保険株式会社 金二〇〇万円

同日動火災海上保険株式会社、同日産火災海上保険株式会社及び同第一火災海上保険相互会社、各金一五〇万円

同富士火災海上保険株式会社 金一〇〇万円

同同和火災海上保険株式会社 金五〇万円

(二)  原告は、昭和五六年三月一九日、北洋相互銀行に対し、幹事会社として、右各金員の合計金五〇〇〇万円をまとめて支払つた。

(三)  したがつて、原告及び各選定者は、それぞれ、各保険引受割合に応じて、右各保険金額の限度で、北洋相互銀行が被告に対して有する前記5の損害賠償請求権を代位取得した。

よつて、原告(選定当事者)は、被告に対し、債務不履行による損害賠償として被告が原告及び各選定者に支払うべき別表二「請求金額」欄記載の各金員及びこれらに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和五六年八月一五日から各支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を支払うことを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実のうち、本件小荷物の中に銀行券金五〇〇〇万円が在中していたかどうかは知らない。その余は認める。

3  同3の事実は認める。

4  同4の事実は知らない。

5  同5は争う。

6  同6の事実は知らない。

7  同7の(一)及び(二)の事実は知らない。(三)は争う。

三  抗弁

1  本件詐取事件の発生状況は、次のとおりである。

(一) 北洋相互銀行函館支店の職員から本件小荷物の運送委託を受けた函館駅発送担当営業係高野等は、本件小荷物を翌一〇日の第七二一D列車(同駅午前七時一五分発)に積載して運送することとし、函館車掌区及び函館鉄道公安室に対し、その旨電話で通知し、その手配方を依頼するとともに、同駅受授担当営業係松山修一にも、その旨を伝えた。

(二) 松山営業係は、一〇日午前六時五五分ころ同駅手小荷物取扱事務室に警備のため到着した函館鉄道公安室公安員山本芳雄と打合わせをし、同事務室を出発する時刻を午前七時ころと決めた。

午前六時五九分ころ、松山営業係は、高野営業係から本件小荷物の引渡を受けた後、これを両手で抱え持つて同事務室を出発し、同駅一番ホームに停車中の同列車に向かつた。その間、山本公安員は、本件小荷物を警備しつつ、松山営業係の後に続いた。松山営業係及び山本公安員は、午前七時〇二分ころ、同列車二両目の乗務員室前に到着した。その時、同所では、既に、同駅事業用品担当営業係の坂本慶三が、発売用の乗車券在中の布袋を同列車の荷扱車掌に引渡すべく、これを右乗務員室内にある車掌専用の机の上に置いたうえ、車掌の来着を待つていた。

(三) 松山及び坂本両営業係並びに山本公安員は、松山、山本、坂本の順で、乗務員乗降口から右乗務員室に入つた。

その時、右乗務員室には、既に、車掌用のモスグリーン色のアノラックを着用した男が待機していた。松山営業係は、いつものとおり、右男に対し、「お願いします。」と声をかけて、本件小荷物を机の上に差し出した。それから、坂本営業係、続いて松山営業係が、所定の受授証を差し出し、坂本営業係が右受授証の甲片と乙片を切り離して机の上に置いた。

右アノラックの男は、全く不審な様子もなく、手慣れた手つきで、机の上の本件小荷物及び乗車券在中の布袋を確認したうえ、受授証の乙片三枚にポンポンと受領印を押し、甲片は右男が、乙片は坂本営業係が受け取つた。

以上により授受は終了したので、松山営業係ら三名は、右男に対し、「お願いします。」と声を掛け、午前七時三分ころ、坂本、松山、山本の順で降車して、それぞれ次の職場に向かつた。

その間、松山営業係ら三名は、右アノラックの男が同列車の荷扱車掌であると信じて疑わなかつた。

(四) 同列車の荷扱車掌滝谷武夫は、午前七時四分ころ、右乗務員室に到着したが、同室内には、既に、右アノラックの男の姿はなく、本件小荷物も見当たらなかつた。

右のようにして、本件小荷物は右アノラックの男に騙し取られてしまつたわけであるが、右に述べたところから明らかなとおり、その受授の時間、場所及び方法並びに右男の服装及び態度等からして、右男が荷扱車掌でないと疑う余地は全くなかつたのであつて、現に松山営業係ら三名は、いずれも右男が荷扱車掌であると信じて疑わなかつた。犯人は、貴重品輸送の手順並びにその受授の時間及び方法等の実態を綿密に調査したうえで犯行の準備をなし、僅か一分足らずという間隙を突いて犯行を決行したものであつて、その手口は巧妙を極めたものというほかなく、他方、本件小荷物の受授に関わつた被告の職員は、その受授に当たり、十分に注意を尽し、慎重な取扱をしたものの、なお、右アノラックの男が荷扱車掌ではないと見破ることができなかつたのである。そうすると、本件詐取事件は、運送人として要求される注意義務を尽したがなお、その発生を防止することができなかつたものといわざるをえず、被告には、運送人として尽すべき注意義務の欠如はなかつたのである。

したがつて、本件小荷物の滅失につき、被告に損害賠償の義務はない。

2(一)  北洋相互銀行は、本件小荷物につき、運送委託の際、鉄道運輸規程の定めるところにより表示料を支払い要償額を表示する措置をとらなかつた。

(二)  本件小荷物は、高価品であり、その重量は、七キログラムであつた。

(三)  したがつて、仮に、本件小荷物の滅失につき、被告に損害賠償の義務があるとしても、鉄道営業法一一条の二第二項により、鉄道運輸規程七三条の定める最高金額金二八万円(一キログラムまでごとに金四万円)を超えて賠償する責任は負わない。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の(一)ないし(四)の事実は知らない。その余は争う。

2  同2の(一)の事実は否認し、(二)の事実は認め、(三)は争う。

五  再抗弁(抗弁2について)

1  本件においては、次の事情があつたので、要償額の表示がある場合と同一視すべきであり、要償額の表示をしていなかつたことを理由に賠償額の制限を主張することは、信義則に反し許されない。

(一) 本件小荷物の運送を委託した際に作成された小荷物切符には、要償額の表示に関する事項は何ら記載されておらず、また、要償額の表示欄も設けられていない。

(二) 実務においては、要償額の表示欄のある書類は使用されていない。

(三) 右小荷物切符には、「貴重品、銀行券五〇〇〇万円」と表示されていた。

2(一)  北洋相互銀行は、本件小荷物の運送を委託した際、被告に対し、本件小荷物の中味が銀行券であり、その価額が金五〇〇〇万円である旨明告した。

(二)  ところで、鉄道営業法一一条にいう要償額の表示と商法五七八条にいう価額の明告とは、運送人にその責任が生じうる損害賠償の最高限度額を予知させるという点において、趣旨を同じくする制度にほかならず、したがつて、要償額の表示はしていないが価額の明告はしているという場合には、直ちに鉄道営業法一一条の二第二項を適用して鉄道運輸規程の定める最高金額に賠償額を制限すべきではなく、あくまで価額の明告という制度の趣旨が生かされるべきであつて、運送人は明告にかかる価額の限度で損害を賠償する責任を負うと解するのが相当である。すなわち、商法五七八条の準用が排除されて鉄道営業法一一条の二第二項が適用されるのは、要償額の表示も価額の明告もしていない場合に限られるのである。

そうすると、本件においては、右(一)のとおり、商法五七八条にいう価額の明告がなされているから、鉄道営業法一一条の二第二項は適用されず、商法五七八条が準用されて、被告は、明告にかかる価額金五〇〇〇万円の限度で損害を賠償する責任を負うことになり、抗弁2は理由がない。

3  仮に、本件詐取事件の発生状況が被告主張のとおりであつたとしても、次の事実があるので、本件詐取事件の発生につき、被告には重大な過失があつたというべきである。

(一) 本件小荷物の授受担当者である松山営業係と滝谷車掌は、互いに相手方の氏名を知らされていなかつたし、また、右両者間で事前の顔合わせもなされていない。

(二) 貴重品の受授時刻が定められておらず、また、本件小荷物につき、具体的に受授時刻の打合わせがなされたこともない。

(三) 貴重品の受授担当者について、名札の着用がなされていなかつた。

(四) 貴重品受授の際、相手方が担当車掌か否かを確認する手続が制度的に定められていなかつた。

(五) アノラックの男は、フードをすつぽりかぶつたまま、マスクで顔を隠し、しかも一言も話さなかつたのであるから、不審に思つて然るべきであつた。

(六) 松山営業係らは、受授証に押捺された受領印を確認することを怠つた。

したがつて、本件については、鉄道営業法一一条の二第三項により、同条の二第二項は適用されないから、抗弁2は理由がない。

六  再抗弁に対する認否

1  同1の冒頭の主張は争う。(一)及び(二)の事実は否認し、(三)の事実は認める。

2  同2の(一)の事実は認め、(二)は争う。

3  同3は争う。抗弁1で明らかにしたとおり、本件詐取事件の発生につき、被告には何ら過失はなかつたのであつて、いわんや重過失などなかつたことはいうまでもない。

第三  証拠<省略>

理由

一請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。

同2の事実は、本件小荷物の中味が何であつたかの点を除き、当事者間に争いがなく、本件小荷物の中に銀行券金五〇〇〇万円が在中していたことは、<証拠>を総合すれば、これを認めることができる。

同3の事実は、当事者間に争いがない。

そして、同1ないし3の各事実に照らせば、同4の事実のとおりであつたということができる。

二ところで、被告は、抗弁1において、本件詐取事件の発生につき被告に過失はなかつた旨主張するところ、他方、原告は、抗弁2に対する再抗弁として、本件詐取事件の発生につき被告には重大な過失があつた旨主張するので、便宜、本件詐取事件発生についての被告の過失の有無の判断と併せて、その軽重についても判断を加えることとする。

<証拠>によれば、次の事実が認められる。

1函館駅では、貴重品小荷物の受託、保管、運搬及び受授等については、一般小荷物の場合と異なり、次のような取扱いをすべきこととされていた。

(一)  貴重品小荷物を受託した際に発行する小荷物切符(甲、乙、丙、丁の四片制)には、その記事欄に、(貴重品の略)と記載したうえ、明告価額を記入する。受託した貴重品小荷物には、小荷物切符の乙片のほか、特別荷物用駅名札(一般小荷物では、荷物用駅名札)をくくり付ける。特別荷物用駅名札の両面には、縁色で「注意」の文字が印刷されており、貴重品の場合には、裏面にと朱印する。

(二)  貴重品小荷物は、受託後直ちに手小荷物取扱所内の金庫に取納し、鎖錠して保管する(一般小荷物は、手小荷物取扱所内の保管場所に置いておく。)。

(三)  貴重品小荷物を積載すべき列車は、予め管理局の通達によつて指定されている(一般小荷物については、そのような指定はなされていない。)。

(四)  貴重品を受託したときは、函館車掌区、函館鉄道公安室及び着駅に対し、貴重品の積載月日、積載列車、輸送区間及び個数を事前に電話で連絡し、所要の手配を求める(一般小荷物については、そのような扱いはなされていない。)。

(五)  車掌との小荷物の受授は、受授証を用いて行われるが、貴重品小荷物については、一個ずつ受授する(一般小荷物は、まとめて受授する。)ので、一個ごとに特殊荷物用受授証(甲、乙の二片制)を作成する(一般小荷物については、一般荷物用受授証(やはり甲、乙の二片制)をまとめて一枚作成する。)。

(六)  貴重品小荷物は、函館鉄道公安室の公安員立会のもと、金庫から取り出したうえ、函館駅受授担当営業係がみずから、公安員に警備されて、列車まで運搬する(一般小荷物は、被告が業務委託している北海道鉄道荷物株式会社の従業員が運搬し、公安員がこれを警備することはない。)。

(七)  貴重品小荷物は、公安員立会のもと、受授担当営業係が荷物車内に乗務している車掌に直接引渡して受授する。その際、持参した特殊荷物用受授証の乙片に車掌の受領印を押してもらい、甲片は車掌が、乙片は営業係が受け取る(一般小荷物は、右受託会社の従業員が列車に積込み、車掌に直接引渡して受授することは行われていない。また、受授証の扱いにしても、受授担当営業係が一般荷物用受授証の甲片だけを持参して乗務車掌に渡すだけで、乙片に車掌の受領印を押してもらうことは行われていない。)。

2函館駅道内発送担当営業係の高野等(以下「高野営業係」という。)は、昭和五六年三月九日午後五時四〇分ころ、北洋相互銀行函館支店の従業員から本件小荷物の運送を委託され、その引渡を受けた。高野営業係は、本件小荷物の荷造を点検したうえ(本件小荷物は、薄灰色の麻袋の口を紐で縛つたもので、大きさは、縦約二〇センチメートル、横約三〇センチメートル、高さ約四〇センチメートルであつた。)、計量し(七キログラムであつた。)、小荷物切符を作成して(記事欄には、、更に、明告価額の表示として、「5000万」と記入した。)、その甲片を右従業員に交付した。

3右受託後、高野営業係は、小荷物切符の乙片とともに、裏面にと朱印した特別荷物用駅名札を本件小荷物にくくり付けたうえ、これを手小荷物取扱所内にある所定の金庫に収納して、鎖錠した。

高野営業係は、本件小荷物を、翌一〇日の第七二一D列車(以下「本件列車」という。第七二一D列車は、函館駅午前七時一五分発松前駅行で、第八二二D列車(松前駅発函館駅午前六時五〇分着)の折返し便。なお、同列車は、管理局により貴重品の積載列車として指定されていた。)に積載して運送することとし、受授に必要な特殊荷物用受授証を作成した(備考欄には、と記入し、さらに、注意を喚起するため、受授証全体に大きく赤で「※」印を記載した。)。

その後、九日午後八時ころ、高野営業係は、函館車掌区及び函館鉄道公安室に電話をかけ、本件列車に貴重品一個を積載するので手配を宜しく頼む旨申し述べ、さらに、同日午後九時ころ、函館駅受授担当営業係の松山修一(以下「松山営業係」という。)に対し、本件列車に貴重品一個を積載する旨を伝えた。それから、午後一〇時三〇分過ぎ、本件小荷物を収納してある金庫の鍵を助役に預けたうえ、休養に入つた。

高野営業係から本件列車に貴重品一個を積載する旨の電話連絡を受けた函館鉄道公安室の公安班長佐渡谷紀雄は、その旨を同日中に当直司令長の小川信昭主任に報告した。

4翌一〇日午前六時三〇分ころ、高野営業係は、松前駅に電話をかけ、本件列車に貴重品一個を積載する旨を伝え、さらに、預けてあつた金庫の鍵を補助者に頼んで取つて来てもらつた。

一方、小川信昭主任は、同じころ、函館駅鉄道公安室の公安員山本芳雄(以下「山本公安員」という。)に対し、本件小荷物の警備を命じた。また、前日高野営業係から電話連絡を受けた函館車掌区の助役伊藤富雄は、一〇日午前六時四五分ころ、本件列車に乗務する車掌三名に対して乗務点呼を行い、その際、荷扱車掌の滝谷武夫(以下「滝谷車掌」という。)に対し、貴重品一個を松前駅まで輸送する旨を伝えた。

当時、貴重品小荷物の警備に当たる公安員が手小荷物取扱事務室に到着すべき時刻は、別段定められていなかつたが、公安員は、受授担当営業係が小荷物を運び出す時刻に合わせて同事務室に行くようにしていたものであつて、第七二一D列車に積載する貴重品小荷物の警備に当たる場合には、午前六時五五分ころ同事務室に到着するようにしていた。この日も、山本公安員は、いつものとおり、午前六時五五分ころ、同事務室に到着した。

山本公安員が到着したので、松山営業係は、同公安員と打合わせをし、手小荷物取扱事務室を出発する時刻を午前七時ころと決めた。当時、車掌との間で小荷物を受授すべき時刻は、別段定められていなかつたが、松山営業係は、担当車掌が列車に乗務すべく到着する時間帯(後記7のとおり、右時間帯は列車ごとに決められていた。)に合わせて列車に到着するようにしていたものであつて(したがつて、列車に到着するのは、車掌の方が先のこともあれば、営業係の方が先のこともあつた。)、第七二一D列車の場合には、午前七時〇四分ころまでには車掌が到着するので、同事務室から同列車の荷物車の乗務員室まで行くのにかかる時間(三分間程であつた。)を考慮して、午前七時ころ同事務室を出発することにしていた。右打合わせの後、松山営業係は、高野営業係に対し、本件小荷物を引渡すよう求めた(なお、本件小荷物の受授証は、既に他の者から受け取つていたし、また、本件列車に積載する一般小荷物の受授証の甲片も、既に受け取つていた。)。そこで、高野営業係は、山本公安員立会のもと、本件小荷物を金庫から取り出し、これを松山営業係に引渡した。松山営業係は、受授証と小荷物切符とを照合したうえ、午前六時五九分ころ、本件小荷物を両手でかかえ持ち、山本公安員が後に続いてこれを警備するという態勢で、同事務室を出発した。

一方、第八二二D列車は、定刻どおり、午前六時五〇分、函館駅一番ホームに到着していた。松山営業係及び山本公安員は、同様の態勢で、二番線の線路沿いを通つて、一番ホームに停車中の本件列車に向かつた。

5そのころ、函館駅事業用品担当営業係の坂本慶三(以下「坂本営業係」という。)は、本件列車に積載する発売用乗車券在中の麻袋六個をビニール紐で一まとめにしたうえ、これを本件列車の荷扱車掌に引渡すべく(事業用品についても、車掌との受授については、貴重品小荷物とほぼ同様の扱いがなされていた。)、本件列車に到着したものの、進行方向前方から二両目の荷物車(キハユニ 二五五号)の乗務員室(以下「本件乗務員室」という。)にはまだ荷扱車掌が来ていなかつたので、一旦本件乗務員室に入つて同室中央付近にある暖房用の放熱器の上に麻袋を置いたうえ、本件乗務員室前から北へ三メートル程のホーム上で車掌の来るのを待つていた。

6松山営業係及び山本公安員は、午前七時〇二分ころ、本件乗務員室前のホーム上に到着した。右両名は、坂本営業係がホーム上で待機しているのに気が付いたが、別段声を掛けることもなく、まず、松山営業係が本件乗務員室のホーム側の乗務員昇降口の扉を開けて中に入り、山本公安員がこれに続いた。坂本営業係も、山本公安員のすぐ後に続いて本件乗務員室の中に入つた。

松山営業係らが本件乗務員室の中に入つた時には、既に被告から冬期職員に貸与されているモスグリーン色のフード付アノラックと見分けが付かないものを着用し(厳寒期には、荷扱車掌は、右アノラックを着用したまま作業をすることがしばしばあつた。なお、当時も、気温は相当低く、しかも、本件乗務員室の中は、暖房が付いていなかつたので、かなり寒い状態であつた。)、フードをかぶり、黒のゴム長靴をはいた男(以下「アノラックの男」という。)が、ホームと反対側の運転台脇の乗務員乗降口の扉のところに、その窓から外を見るような格好で背中を向けて立つていた。松山営業係は、持参した本件小荷物を、ホーム側の乗務員乗降口脇にある車掌執務用の机の上に置き、さらに、放熱器の上に置いてあつた乗車券在中の麻袋を同じ様に机の上に上げた。それから、松山営業係は、机の脇にこれに向かつて立ち、持参した本件小荷物の受授証及び一般小荷物の受授証の甲片を机の上に出しながら、左隣りに同じく机に向かつて立つていた坂本営業係に対し、同人が持参した乗車券の受授証についても自分がまとめて車掌から受領印をもらつてやる旨申し向けたところ、坂本営業係は、自分の方でまとめてもらつてやる旨答えたうえ、持参した乗車券の受授証二枚を机の上に置き、さらに、本件小荷物及び乗車券の受授証計三枚の甲片と乙片とをそれぞれ切り離した。アノラックの男は、当初立つていた位置から振り返つて机の方に向かつて歩いて来て、松山営業係の右隣りに同じく机に向かつて立ち(顔には白いマスクをしていた。)、二、三回咳をした後、立つたままの姿勢で、右受授証の乙片三枚にポンポンと所携の判で印を押した。山本公安員は、松山営業係の背後にあつて、右受授作業の様子を見ていた。

坂本営業係は、机の上にある押印済の受授証の乙片三枚を取つて、ホーム側の乗務員乗降口からホームに降り、続いて松山営業係、さらに山本公安員が、こもごもアノラックの男に「お願いします。」と声を掛けて、同じく乗務員乗降口からホームに降りた。松山営業係らが本件乗務員室前に到着してから再びホームに降りるまでにかかつた時間は、約一分間程であつた。その間、アノラックの男は、一言も言葉を発しなかつた。松山営業係は、ホームで坂本営業係から押印済の本件小荷物の受授証の乙片を受け取ると、すぐさまその場を離れ、次の作業に向かつた。坂本営業係及び山本公安員も、同様に、すぐさまその場を離れ、次の作業に向かつた。松山及び坂本両営業係並びに山本公安員は、いずれも、右受授作業の際、アノラックの男が付いた判の印影を確認することはしなかつた。

松山及び坂本両営業係並びに山本公安員は、右受授作業の際、アノラックの男に対し何ら不審の念を抱くことなく、その男が本件列車に乗務する車掌であると信じて疑わなかつた。

7車掌が列車に乗務すべき時間帯は、諸般取扱方(車掌編)において列車ごとに定められていて、第七二一D列車については、午前七時〇〇分から七時〇四分までの間に乗務すべきこととされていた。滝谷車掌は、これに従い、第七二一D列車については、午前七時〇四分ころ乗務することにしていた。この日も、滝谷車掌は、いつものとおり、乗務点呼を受けた後、列車乗務の仕度を済ませて、本件列車に向かい、午前七時〇四分ころ、本件乗務員室に到着した。しかしながら、室内には、既にアノラックの男の姿はなく、本件小荷物も見当らなかつた。その後の調査で、本件小荷物は、アノラックの男に騙し取られたことが判明した。

8函館駅では、本件詐取事件の後、今後二度と同様の事件が起きることのないよう、貴重品小荷物の受授方法について、次のとおりの変更が加えられた。

(一)  営業係が車掌区に対し貴重品の積載あることを連絡する際、受授担当営業係及び乗務車掌の氏名を互いに通知し合い、これを控えておき、受授の際は、互いに氏名を言い合つて、予め通知を受けていた氏名と一致するかどうかを確認する(車掌が押す受領印の印影も確認する。)。

(二)  公安員も、予め受授担当営業係及び乗務車掌の氏名の通知を受けて、これを控えておき、受授の際、右氏名と現実の受授者のそれとが一致するかどうかを確認する。また、公安員は、受授終了後も現場に残り、車掌が荷物車内の貴重品箱に貴重品小荷物を収納して鎖錠するのを見届け、さらに、列車が発車するまでその場に残つて警備を続ける。

以上の各事実が認められ(以上の事実のうち、本件小荷物が、昭和五六年三月一〇日、函館駅午前七時一五分発の第七二一D列車に積載して運送されることになつていたこと、本件小荷物が、右同日、函館駅一番ホームに停車中の同列車二両目の乗務員室において、何者かによつて騙し取られてしまつたことは、当事者間に争いがない。)、<証拠>中、右認定に反する部分は、措信できない。

以上の事実に基づき検討するに、被告には、運送契約上、運送の過程で運送品が盗取されたりすることのないよう措置すべき注意義務があり、盗取等の危険が大きい貴重品については、とくに慎重な取扱いをすべきことが要求されるところ、確かに、被告は、貴重品小荷物については、それが盗取されたりすることのないよう、その受託、保管、運搬及び受授等につき、一般小荷物と異なるより慎重な取扱いをしていたけれども、本件詐取事件は、その発生を予見することができなかつたとはいえないし、事件後における貴重品の受授方法の変更に徴すれば明らかなとおり、その発生を予見したうえ、受授担当者間で互いに相手方の氏名を確認するような業務体制をとつてさえいれば、このような事態の発生は十分にこれを回避することができたはずであることからすると、そのような業務体制をとつていなかつた被告に全く過失がなかつたとはいえず、抗弁1は理由がない。

しかしながら、他方、受授時刻は別段定められていなかつたものの、車掌の乗務時刻は定められており、受授担当営業係は、右時刻に合わせて列車に到着するようにしていたのであつて、車掌の方が先に乗務する場合もあり、そのような場合には、そもそも本件詐取事件のような事態は起こりようがないし、営業係の方が先に到着した場合であつても、営業係が到着してから車掌が乗務するまでの時間的間隔は、ほんの僅かなものにすぎず(現に、本件では、右時間はたつたの二分間である。)、したがつて、このような僅かな間隙を突いて、にせ車掌が小荷物を詐取したうえ、首尾よく現場を立ち去るなどということは、極めて考えにくいことといわねばならない。そうすると、本件詐取事件のような事態の発生を予見することは、極めて困難であつたといわざるをえず、したがつて、その発生を予見したうえ、受授担当者間で氏名を確認し合うような業務体制をとることを怠つたことをもつて、被告に重大な過失ありと評することは、余りに酷に失するものというべきである。また、実際に本件小荷物の受授を担当した松山営業係らは、アノラックの男を本物の車掌と信じたがために、本件小荷物の詐取という事態を発生させてしまつたわけであるが、アノラックの男は、被告が職員に貸与しているアノラックと見分けがつかないものを着用していたこと、乗務員室に被告の職員以外の者が居るということは通常考えられないこと、アノラックの男は、第七二一D列車に平常車掌が乗務する時刻ころに乗務員室に居たこと、アノラックの男は、机の上にある数枚の受授証のうち、本来車掌において受領印を押すことが予定されている乙片三枚にポンポンと所携の判で印を押したことからすると、アノラックの男が受授作業の間一言も言葉を発しなかつたということを考慮に入れても、なお、松山営業係らにおいてアノラックの男を担当乗務車掌と信じて疑わなかつたのも無理からぬところといわざるをえず、したがつて、松山営業係らがアノラックの男の正体を見破れなかつたことをもつて同人らに重大な過失があつたということは到底できない。その他、本件詐取事件の発生につき、被告に重大な過失があつたものと認むべき事情は何ら存しない。

三抗弁2について

1鉄道営業法一一条及び鉄道運輸規程二九条、三〇条によれば、要償額の表示をするには、運送品託送の際、所定の表示料(高価品については、表示額金一〇〇〇円までごとに金一円を超えない範囲において鉄道の定める額)を支払わなければならないところ、<証拠>によれば、北洋相互銀行の係員は、本件小荷物を運送委託する際、右表示料を支払わなかつたことが認められるから、本件小荷物につき要償額の表示がなされなかつたことは明白である。

2抗弁2(二)の事実は、当事者間に争いがない。

四再抗弁1について

原告は、同(一)ないし(三)の事実があつたので、本件は要償額の表示がある場合と同一視すべきである旨主張するが、五で明らかにしたとおり、要償額表示制度を利用するには、所定の表示料を支払うことが法定の要件とされているところ、北洋相互銀行は前認定のとおり表示料を支払わなかつたのであるから、たとえ原告主張の事実があつたとしても(ちなみに、<証拠>によれば、要償額の表示がなされたときは、小荷物切符の「記事」欄に「要償額何円」と、料金欄に表示料として「」料「何円」と記載することになつていることが認められる。)、これを根拠に、要償額の表示がある場合と同一視すべき合理的な理由は見出せず、賠償額の制限を主張することが信義則に反すると認むべき理由も存しないから、再抗弁1は主張自体失当である。

五再抗弁2について

再抗弁2(一)の事実は、当事者間に争いがない。そして、原告は、右のとおり、本件においては商法五七八条にいう価額の明告がなされているから、鉄道営業法一一条の二第二項は適用されず、明告額の限度で賠償責任がある旨主張する。

そこで、右両法条の関係について検討するに、貨弊・有価証券等高価品の運送においては、運送品が滅失、毀損するおそれが大きく、一旦かかる事故が起きれば損害も巨額にのぼることが予想されるのに、荷送人から運送品の種類及び価額が明告されないと、運送人は、特別の注意を払い、また、高率運送賃を取得する機会を失うことになるから、商法五七八条は、高価品の明告がない以上、運送人は損害賠償責任を全く負わない旨規定する。すなわち、同条は、損害賠償責任の発生障害規定ないし免責規定である。他方、鉄道営業法一一条の二第二項は、荷送人から高価品の明告がなされ、鉄道が運送品の滅失、殷損につき損害賠償の責に任ずべき場合を前提にして、かかる場合にもなお、大量の物品を低廉な料金で運送すべき鉄道の立場を考慮し、所定の表示料を支払つて要償額を表示しておかない限り、鉄道の軽過失については、賠償額を鉄道運輸規程所定の最高額まで制限する旨規定する。すなわち、同条項は、高価品の明告がなされ、免責規定たる商法五七八条が適用されない場合に、はじめて適用の可能性が出てくる鉄道の賠償制限規定であつて、荷送人による高価品の明告がない場合には、およそ適用の余地なき条項である。

そうすると、荷送人による高価品の明告がなされているときは、右賠償額制限規定は適用されるべきでないとか、同規定が適用されるのは、高価品の明告も要償額の表示もともになされていない場合に限られるべきであるとかいう原告の主張は、右両法条の関係を正解しないものであつて、採るをえない。

六前記二で述べたところから明らかなとおり、再抗弁3は理由がない。

そうすると、抗弁2により、被告は北洋相互銀行に対し、金二八万円の限度で、本件詐取事件の発生によつて同銀行が被つた損害を賠償する責任があることになる。

七請求原因6の事実は、<証拠>により、これを認めることができ、同7(一)及び(二)の各事実は<証拠>により、これを認めることができる。

したがつて原告(選定当事者)及び各選定者は、それぞれ、請求原因6(九)(1)の各保険引受割合に応じて、同7(一)の各保険金額の限度で、北洋相互銀行が被告に対して有する金二八万円の損害賠償請求権を代位取得した。

八以上によれば、原告(選定当事者)の本訴請求は、被告に対し、原告については金六万四四〇〇円、選定者共栄火災海上保険相互会社については金五万〇四〇〇円、同安田火災海上保険株式会社については金四万四八〇〇円、同日本火災海上保険株式会社については金二一万六四〇〇円、同東京海上火災保険株式会社及び同住友海上火災保険株式会社については各金一万九六〇〇円、同千代田火災海上保険株式会社については金一万一二〇〇円、同日動火災海上保険株式会社、同日産火災海上保険株式会社及び同第一火災海上保険相互会社については各金八四〇〇円、同富士火災海上保険株式会社については金五六〇〇円、同同和火災海上保険株式会社については金二八〇〇円並びに右各金員に対する本件訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和五六年八月一五日から各支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので、右の限度でこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条但書を、仮執行宣言につき同法一九六条を、それぞれ適用し、担保を条件とする仮執行免脱宣言の申立については、その必要がないものと認め、これを却下することとし、主文のとおり判決する。

(佐久間重吉 池田克俊 山口裕之)

選定者目録

選定者 共栄火災海上保険相互会社

右代表者 高木英行

選定者 安田火災海上保険株式会社

右代表者 宮武康夫

選定者 日本火災海上保険株式会社

右代表者 右近保大郎

選定者 東京海上火災保険株式会社

右代表者 石川賽

選定者 住友海上火災保険株式会社

右代表者 徳増須磨夫

選定者 千代田火災海上保険株式会社

右代表者 川村忠男

選定者 日動火災海上保険株式会社

右代表者 中根英郎

選定者 日産火災海上保険株式会社

右代表者 本田精一

選定者 第一火災海上保険相互会社

右代表者 西原直廉

選定者 富士火災海上保険株式会社

右代表者 葛原寛

選定者 同和火災海上保険株式会社

右代表者 辻野友宜

別表一

原告(選定当事者)及び選定者      認容金額

原告日新火災海上保険株式会社     金六万四四〇〇円

選定者共栄火災海上保険相互会社    金五万〇四〇〇円

右同安田火災海上保険株式会社     金四万四八〇〇円

右同日本火災海上保険株式会社     金三万六四〇〇円

右同東京海上火災保険株式会社     金一万九六〇〇円

右同住友海上火災保険株式会社     金一万九六〇〇円

右同千代田火災海上保険株式会社    金一万一二〇〇円

右同日動火災海上保険株式会社     金  八四〇〇円

右同日産火災海上保険株式会社     金  八四〇〇円

右同第一火災海上保険相互会社     金  八四〇〇円

右同富士火災海上保険株式会社     金  五六〇〇円

右同同和火災海上保険株式会社     金  二八〇〇円

別表二

原告(選定当事者)及び選定者      請求金額

原告日新火災海上保険株式会社      金一一五〇万円

選定者共栄火災海上保険相互会社     金 九〇〇万円

右同安田火災海上保険株式会社      金 八〇〇万円

右同日本火災海上保険株式会社      金 六五〇万円

右同東京海上火災保険株式会社      金 三五〇万円

右同住友海上火災保険株式会社      金 三五〇万円

右同千代田火災海上保険株式会社     金 二〇〇万円

右同日動火災海上保険株式会社      金 一五〇万円

右同日産火災海上保険株式会社      金 一五〇万円

右同第一火災海上保険相互会社      金 一五〇万円

右同富士火災海上保険株式会社      金 一〇〇万円

右同同和火災海上保険株式会社      金  五〇万円

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